2011年4月29日金曜日

ゴア・ヴィダル、吠える


ゴア・ヴィダルは4月27日からカナダのモントリオールで開催されているブルー・メトロポリス文学祭に出演している。モントリオール・ミラー誌はこれに先立ちヴィダルにインタビューを敢行した。以下はそのインタビューの抜粋である。なお、日本人が関心を持たないであろう部分は翻訳していない。また、一部「超訳」しているので、あしからず。
ゴア・ヴィダルがオバマ、サラ・ペイリン、同性結婚について語る必読のインタビューである。

ヴィダルの『都市と柱』が1948年に出版された時、22歳の著者(川本注・ヴィダルが『都市と柱』を出版したのは23歳。執筆したのは21歳。誤りである)はその年のアメリカの文壇で注目を浚った。この小説は同性愛のロマンスを肯定的に主題にしたものである。影響は長きにわたり、ニューヨーク・タイムズはホモセクシュアルの描写を理由に、彼の続く5冊の本の書評を拒否した。

ヴィダルはしばしば、アメリカ政界のエスタブリッシュメントに攻撃を仕掛けるなど、興味深い議論を続けている。右派は長い間、彼を憎悪してきた。彼とウィリアム・F・バックレーは1960年代から1970年代にかけて議論し続けてきた。しかし、彼の議論の相手はバックレーに留まらない。ヴィダルは公的な場でノーマン・メイラー、トルーマン・カポーティと口論し、最近ではエドマンド・ホワイトとやりあっている。

ヴィダルは特に共和党に批判的だが、時々奇妙な政治的問題も引き起こす。彼はティモシー・マクベイ(オクラホマシティ連邦政府ビル爆破事件の主犯。テロリストとして2001年に処刑)と多くの手紙をやり取りした。

ヴィダルは現在84歳(川本注・誤り。ヴィダルは1925年10月3日生まれ。85歳)、今年のブルー・メトロポリス文学祭にゲストとして招かれている。ミラーは彼をロサンジェルスの自宅でインタビューした。

ミラー:オバマのやったことについてどう思われます?
ヴィダル:多くの誤解がある。オバマは防衛のために多くの兵器を持つ必要はないと強く感じているんだ。彼は学ぶことを止めないし、それは良いことだ。例をあげればウッドロウ・ウィルソンだが、もし我々の大統領たちが学び、行動していればなお良かったんだが。急進的に物事を進めると騒動になるものさ。

ミラー:オバマには会ったことがありますか?
ヴィダル:オバマには会ったことがない。ありがたいことに、私はうんざりするほど大統領たちと会っているのでね。

ミラー:米国はファシスト独裁に向かっていると言いましたよね?
ヴィダル:そんなことを言った覚えはない! 私は可能性について話しただけだ。我々は真面目な問題について真面目に話している。もっと真面目に話せ。

ミラー:9.11以来、愛国心が叫ばれているため、検閲がマッカーシズムの時代より酷くなったと言われています。
ヴィダル:両者に関係があるとは思えない。しかし、人間はいつも似たようなことをやるものだ。保守派も「人間」だからね。

ミラー:あなたは民主党と共和党に違いはないと言いましたよね。
ヴィダル:そう思うかい? 君がそう思っているだけだ。

ミラー:あなたはブッシュをアメリカで最も馬鹿な人間だと言いましたよね?
ヴィダル:そんなことを言った覚えはない。私は彼が最も馬鹿な大統領だといったんだ。馬鹿なアメリカ人なら他に幾らでもいる。

ミラー:サラ・ペイリンについてどう思われます?
ヴィダル:あんなやつはどうでもいい。彼女は野蛮なアラスカからやってきた。私はアラスカで長い間従軍経験があるんだが、あんなド田舎を礼賛する気になるものか。全てがデタラメに見えたよ。

ミラー:ペイリンは大統領になれると思いますか?
ヴィダル:そうだね、ローマの没落を知っているだろう。激変する状況は全てを可能にしてしまう。

ミラー:同性婚についてどう思われますか?
ヴィダル:あまり興味がない。「妻」やら「夫」やら「独身者」と呼ばれるのに何の違いがある? この問題について興味を持てと言われても非常に難しいな。

ミラー:Facebookはやっておられますか?
ヴィダル:ああ、そんなものやっているわけないだろう! 私は11歳の餓鬼じゃない!(川本注・ヴィダルはPCを所有しているものの、ハワード・オースティン――ヴィダルの恋人。2003年没)――存命中は彼に操作を任せていた。現在は秘書に任せているらしい。依然としてヴィダルは執筆を手書きとタイプライターで行っている)

ミラー:若い作家たちにアドバイスをお願いします。
ヴィダル:いかにして読むか学びなさい。

ミラー:あなたは(テロリストの)ティモシー・マクベイを愛国者と呼びました。後悔はしていませんか?
ヴィダル:後悔などするものか。私が彼のことを語る前に、君は彼のことを知っていたのか? つまり、私はアメリカ人だが、自分のベストを尽くす。
 Gaga for Gore 

2011年4月22日金曜日

Wikipediaには載っていない! 2011年のゴア・ヴィダルの動向Part2

・4月10日に行われたStoney Awardsにジェーン・フォンダが出演、ゴア・ヴィダルを賞賛する

ジェーン・フォンダはLGBT政治活動家に賞を与えるStoney Awards(名前のとおり、ストーン・ウォール事件を記念した賞である)に出演して、スピーチを行い、友人であるゴア・ヴィダルを誉め讃えた。
Stoney Awards celebrate LGBT politicians

・2012年の大統領選に合わせ、ゴア・ヴィダルの戯曲The Best Manがブロードウェイで再演決定

The Best Manはゴア・ヴィダルの戯曲の中で最も知られた作品であり、浮気性の知事と隠れゲイの上院議員が大統領予備選挙を巡って泥仕合を演じる、という政治風刺喜劇で、これまでも接戦が予想される大統領選の度に再演されてきた。

2001年のブッシュVSゴアの際もブロードウェイで再演され、Drama Desk Award for Outstanding Revival of a Playを受賞。トニー賞にも1960年の初演時同様、ノミネートされた。

ヴィダルは再演の度に時流に合わせて脚本に改訂を行ってきたが、政治における「最良の人」は、野心と権力欲に満ちた政治家などではなく、私心なく、国民に尽くす人間である、という結論は変わっていない。

映画版The Best Manはフランクリン・J・シャフナー監督、ヘンリー・フォンダ主演で1964年に公開され、ヴィダルは原作のみならず、脚本も担当した。
ヴィダルにとって会心の出来となったが、現在も日本ではDVD化されていない。
New York Production Listings

2011年4月21日木曜日

DVD『マイラ ―むかし、マイラは男だった―』明日、発売!






いよいよ明日4月22日、ゴア・ヴィダル原作の映画版『マイラ』が41年振りに甦り、DVDとして発売されます。
『マイラ ―むかし、マイラは男だった―』は1970年の公開時に故・淀川長治氏が大プッシュしたにもかかわらず、興行的には無視され、テレビ東京の深夜放送や内輪の上映会でしか観ることが出来ない貴重な作品でしたが、アメリカでのDVD化に連動したファン・リクエストによって、遂に日本でもリリースされます。

ストーリーのアウトラインはヴィダルの原作とほぼ同様ですが、ヴィダルが小説内で滔々と書き綴るジェンダー論や、文化に関する夥しい言及、そして全編を通じて展開される黙示録的思想は映像化不能なためカットされ、代わりに『ジョアンナ』の監督マイケル・サーンによる旧作クリップを大量にコラージュした前衛的な演出が楽しめます。

主演にラクエル・ウェルチ。この映画のためにカムバックした1930年代のセックス・シンボル、メェ・ウェスト、映画監督のジョン・ヒューストンまで出演して怪演を見せ、後に大ブレイクするファラ・フォーセットが脇を固めるという豪華キャストで、主題歌はシャーリー・テンプル。

性転換したヒロインのマイラを演じるラクエル・ウェルチが男をディルドで犯したり、ファラ・フォーセット演じるメアリー・アンと同性愛(?)シーンを演じたため、20世紀FOX始まって以来の成人指定を受けた衝撃の問題作です。

映画ファン、トランスジェンダーに興味のある方は必見の映画と言えるでしょう!

併せて小説版『マイラ』の復刊リクエストもよろしくお願いします。

『マイラ(ゴア・ヴィダール)』 復刊リクエスト投票

100票が復刊の目処が立つラインで、現在22票です。
皆様のお力をお貸し下さい!

2011年4月18日月曜日

『マイラ』復刊運動始めました!

『マイラ(ゴア・ヴィダール)』 復刊リクエスト投票

復刊ドットコムにてゴア・ヴィダル(当時はゴア・ヴィダール表記)の代表作『マイラ』の復刊運動を始めました。
4/22の映画版DVD発売に併せての復刊運動です。
決して読んで損はさせません!
是非皆様の清き一票を!

書評:"Palimpsest"




回想録Palimpsestは間違いなくゴア・ヴィダルの最高傑作だ。エッセイストとしての天才と小説家としてのストーリーテリングの能力、機知に満ちたインタビュイーとしての警句の数々、その全てが完璧に一体となって効果を発揮している。これほどの完成度と内容の面白さを兼ね備えた作品はヴィダルの作品史上でも希有だ。回想録という全く日本人受けしないうえ、文学というフィールドでは見落とされがちなジャンルでその天才を存分に発揮してしまうところにヴィダルの不幸がある。
何故、ヴィダルがこの回想録を小説の形で発表しなかったかは大いなる疑問であり、悔やんでも悔やみきれない判断ミスだったと思う。トルーマン・カポーティの『叶えられた祈り』のように実在人物を全て実名で登場させ、小説と銘打って発表すれば、彼はアメリカのプルーストになれただろう。

Palimpsestはヴィダルが小説家として未だ成功を収めていなかった前半生を振り返った回想録である。盲目の上院議員の孫として生まれ、第2次世界大戦に軍の輸送船の航海士として従軍。戦争小説Williwaw21歳で出版し、小説家デビュー。期待の新人として注目されるが、23歳の時、アメリカ文学史上初めて同性愛を肯定的に扱った『都市と柱』で大論争を巻き起こして文壇を一時追放される。その影響で経済状況が悪化したため変名出版や脚本家としての活動を余儀なくされ、ブロードウェイで2つの大ヒットを送り出して苦境から抜け出し、政治にも色気を出すものの、下院議員選で惜しくも落選。イタリアに渡り、歴史小説『ユリアヌス(Julian)』を書き上げてベストセラー1位に送り込み、ようやく小説家として返り咲くまでが、1994年の生活と平行して描かれる。

もちろん、これは概要に過ぎない。「嘘八百?」で始まるこの回想録には俄には信じ難い彼の紆余曲折に満ちた華々しい人生が、歯に衣着せぬヴィダル一流の文章で描かれている。ゴシップにも事欠かない。自分のバイセクシュアリティについての考察、ジャクリーン・オナシスと義理の血の繋がらない兄妹であること――最終的にヴィダルは「彼女は金が一番重要だった」と一刀両断している。アナイス・ニンとの関係。テネシー・ウィリアムズとの長きに渡る友情、トルーマン・カポーティとの確執、ジャック・ケルアックとの情事(!)、ジョージ・サンタヤナやEM・フォースター、アンドレ・ジッド、ジャン・コクトー、クリストファー・イシャーウッド、ポール・ボウルズ、ウィリアム・S・バロウズとの出会い――ヴィダルはEM・フォースターについて「彼は当時存命の小説家の中で最も尊敬する1人だった。しかし、実際の彼は本当に嫌な奴だった」と遠慮がないし、ジッドとの邂逅では何とも間抜けな光景が展開される――ジッドは訪問したヴィダルにいきなり美少年の児童ポルノ写真を自慢気に見せたので、ヴィダルはドン引きしてしまったのだ。ジョアン・ウッドワードとポール・ニューマンとハワード・オースティン(ヴィダルのライフパートナー)との四角関係と奇妙な同居生活。アルコール中毒の母親との問題。政治的活動のエピソードにも事欠かない。JFKやエレノア・ルーズヴェルトとの友情関係。下院議員に立候補し、善戦するも僅差で落選。ケネディ政権への参画とRFKとの対立により、ホワイトハウスを去るエピソード。ヒラリー・クリントンとの会談(1994年)。思わずニヤリとしてしまう、ユーモラスにして、ショッキングなエピソードが矢継ぎ早に繰り出される。

しかし、この回想録の通奏低音になっているのは、こうしたゴシップではなく、皮肉屋で冷笑家のヴィダルには珍しく、『都市と柱』を捧げた初恋の人、JT=ジェームズ・トリンブル(19歳の若さで、太平洋戦争中、硫黄島で戦死)との純愛である。ヴィダルは彼の墓の隣に自らとハワード・オースティンの墓地を購入したことを告げて、この回想録を終える。

この回想録は痛快無比で、正にヴィダルの毒舌の真骨頂であり、当時のアメリカン・カルチャーに興味がない人でも、人生を芸術にしてしまった――あたかもオスカー・ワイルドのように――1人の男の波瀾万丈な回想を心ゆくまで楽しむことが出来るだろう。

柳下毅一郎氏もその日記で「機内ではゴア・ヴィダルの回顧録を読む。いきなりジャッキー・ケネディが義妹(というか義理の父の再婚相手の連れ子がジャッキーだった)とかって大ネタが出てきて痺れる。メチャクチャ面白いんですが、なかなか読み進めず、映画ネタとか出てくるのはまだまだ先だな。」と書いておられ、メールを遣り取りさせて戴いた時も「翻訳したいが時間がない」とおっしゃっていたのを思い出す。加えて、柳下氏はヴィダルの魅力は「良い意味での軽さ」だと言っていたのが印象に残る。

Palimpsestの日本での翻訳を心から望んでやまない。たぶん、まだ無理だろう。だが、あれだけ日本で無視されていたイギリスのユーモア作家P・G・ウッドハウスが少女漫画化されてしまう時代に我々は生きているのだ。何が起こるかわからない。切に翻訳希望! と叫んでこのレビューを終えよう。

(この書評は削除した私のゴア・ヴィダル・ファンBlog“Homage to Gore Vidal”(FC2)に掲載したものに加筆・修正を加えた)

2011年4月17日日曜日

Wikipediaには載っていない! 2011年のゴア・ヴィダルの動向Part1

・ゴア・ヴィダルVSミシェル・バックマン

共和党の女性下院議員ミシェル・バックマンが「ゴア・ヴィダルの『アーロン・バアの英雄的生涯』『1876』(早川書房より邦訳あり。絶版)を読んだことで、私は気分を害し、リベラルに懐疑の念を抱き、保守に転向し、共和党に入党した」と発言。
ゴア・ヴィダルはたった一言「彼女は愚かすぎて答える気にもならない」とコメント。
バックマンは全米の笑い物になった。

・ハリウッド・ヒルズの家を売却

1977年に購入したカリフォルニア州ロサンゼルス、ハリウッドヒルズ、アウトポストドライブの自宅を1月16日に394万5000ドルで売却。彼は2005年にイタリアのラヴェッロを去って以来、この家に住み続けていた。余談だが、川本はこの家の住所をラヴェッロでヴィダルの親友であり、旧ヴィダル邸ラ・ロンディネイアの現オーナー、ヴィンセンゾ・パルンボ氏から入手。直接、ヴィダル宛の手紙を書いたのだが、この住所変更によって、ヴィダルの出版社と交渉しなければならなくなり、インタビューの交渉に遅れが出ている。ヴィダルは現在もロサンゼルス、ビバリーヒルズに住み続けているということだが、何故引っ越した!
Gore Vidal's Hollywood Hills Home For Sale

・エドガー・ボックス名義で書かれた探偵小説3部作をゴア・ヴィダル名義で再版

1950年代にエドガー・ボックス名義で出版し、ベストセラーになったものの、半世紀も自らの意思で絶版にしていた探偵小説3部作(最終作『死は熱いのがお好き』はハヤカワ・ミステリより邦訳あり。絶版)を突如、ゴア・ヴィダル名義で再版。
プロモーションのためにインタビューに応じ、ニューヨーク・タイムズを攻撃。騒動になる。
Gore Vidal Mocks New York Times

(現在、出演映画Gore Vidal's America, 2plus2makes4,Salingerが公開準備に入っている)

2011年4月16日土曜日

告知!

明日、4/17(日)、六本木で開催されるトランスジェンダーパーティ「+α」に、20世紀FOXから4/22に発売されるゴア・ヴィダル原作の性転換映画『マイラ ―むかし、マイラは男だった―』の宣伝のために出演します!
フライヤーも配りますので、お暇な方は是非いらっしゃって下さい!
+αで僕と握手!

+α公式

2011年4月12日火曜日

Wikipediaには載っていない! 2006-2010年までのゴア・ヴィダルの動向

日本語版Wikipediaには載っていない2006-2010年までのゴア・ヴィダルの動向を一挙に紹介。

・2006年

アニメ『ザ・シンプソンズ』 シーズン18エピソード6"Moe'n'a Lisa"にトム・ウルフらと本人役で声の出演。
アニメ『ファミリー・ガイ』シーズン5エピソード2"Mother Tucker"に声の出演。

(回想録第二弾Point to Point Navigation刊行。映画『PEACE BED アメリカVSジョン・レノン』に出演。短編集Clouds and Eclipses刊行)

・2007年

国際ペンクラブがニューヨークで開催したThe PEN World Voices festivalにポール・オースターらと共に登場し、スピーチを行う。
The PEN/Borders Literary Service Award を受賞。
雑誌The Guardianのインタビューに答え、9.11に対するアメリカ政府の対応への疑念を一貫して表明して来たことで陰謀論者とレッテルを貼られ、「私は陰謀論者ではない。私は陰謀の分析家だ」と反論。
Vidal salon

(映画『ZERO:9/11の虚構』に出演)

・2008年 5月28日、雑誌Esquireのインタビューに答える。一部抜粋。

「Wikipediaでは全てが間違っている」
「私が知っている馬鹿は全員大学へ行った。必要なことだとは思えなかったね。その結果を見てきたからな」
「私は50年間(注・正確には53年間)ハワード(注・ゴア・ヴィダルのライフ・パートナーであり、恋人だったハワード・オースティンのこと。2003年、癌により死去)と暮らしたが、そこには全くロマンティックな愛情も情熱的な愛情もなかった。完全にノンセクシュアルな関係だった。オカマ達にやってみろと伝えろ」
「宗教を除去しろ。人間を駄目にするから」
「私は誰にも似ていなかった。誰もがやることを私はしてこなかったからだ」
と言いたい放題。毒舌は健在だった。
What I’ve Learned: Gore Vidal

(エッセイ集The Selected Essays of Gore Vidalを刊行)

・2009年 ゴア・ヴィダルVSエドマンド・ホワイト

アメリカを代表するゲイ作家、エドマンド・ホワイトが戯曲Terre Hauteを発表。1995年4月19日に168人が死亡したオクラホマシティ連邦政府ビル爆破事件の主犯、テロリストのティモシー・マクベイ(2001年6月11日死刑)とゴア・ヴィダルをあからさまにモデルにした老作家が恋に落ちる内容で、ゴア・ヴィダルは激怒。
The Timesのインタビューでホワイトを「不潔で低俗な作家」と呼び、Terre Hauteを「下品なオカマ主義の作品だ」とこき下ろす。
Gore Vidal: ‘We’ll have a dictatorship soon in the US’

これに対し、エドマンド・ホワイトはSalon.comのインタビューで反撃。
「ゴアは完全に狂っていると思うから、彼の言うことは気にしない。残酷で、嫌なやつだ。今、彼は書くことが出来ない。車椅子生活を送っているし、苦しんでいる。長年連れ添った恋人(注・ハワード・オースティンのこと)を失ったんだ。最後に会った時、言ったんだ。『ディナーに来てよ。可愛い男の子たちと会わせてあげよう』『ああ、私はそんな連中とは会いたくない!』知ってのとおり、彼はただの老いぼれの不機嫌屋さ」
「彼はずっと私に良くしてくれたが、いつも火山のように激怒するんだ」
そして、ホワイトの攻撃はヴィダルの作家としての評価にも及ぶ。
「彼が何故有名なのかわからない。歴史小説群は完全な剥製みたいなものだからだ。誰も読むことが出来ない。『マイラ』は面白いが、軽い。エッセイは誰もが評価するが、20世紀最高のエッセイを書いている友人が、どれも酷く類型的で、今では全てが時代遅れだと言っていたよ。彼の代表作がどれなのか私にはわからない。永続的なキャリアを持つ作家なら1冊か2冊の優れた作品があるはずなんだが、彼がそれをやったとは思わないね」
Edmund White comes out swinging

ゴア・ヴィダルはエドマンド・ホワイトの処女作Forgetting Elenaが1973年に出版された時、ウラジーミル・ナボコフと共にいち早くこれを高く評価してホワイトが作家としてキャリアを積むのに貢献し、良好な関係を築いてきたが、二人の友情はホワイトがヴィダルをモデルにした作品を書くことによって、脆くも崩れ去ることとなった。

(回想録第三弾Gore Vidal: Snapshots in History's Glareを刊行。映画Shrinkに出演)

・2010年 イタリア再訪

2010年7月、ヴィダルはイタリアを再訪した。2005年まで33年間住んだラヴェッロに帰り、そこで旧交を温めた後、ポンペイに向かった。
Gore Vidal arriva a Ravello per Pompei

※私はラヴェッロにおいてヴィダルの元邸宅ラ・ロンディネイアの現オーナーであり、親友であるヴィンセンゾ・パルンボ氏に3日間に及ぶインタビューを敢行し、この時のヴィダルの様子を訊いた。近日中にパルンボ氏のインタビューは当Blogにて発表予定。

(ドキュメンタリー映画『スタンディング・アーミー』にノーム・チョムスキーらと共に出演。沖縄を含め、世界中に常駐するアメリカ軍を批判。日本でも上映される。映画Norman Mailer: The Americanに出演)

2006年から2010年までのゴア・ヴィダルの動向を駆け足で振り返って来たが、いかがだっただろうか。
85歳の今もヴィダルは精力的に活動を続けているので決して目が離せない。

2011年4月9日土曜日

About

Homage to Gore Vidalへようこそ。
ここはフリーライター/在野のゴア・ヴィダル研究家、川本直が運営するゴア・ヴィダル・ファンBlogです。
ゴア・ヴィダルの最新情報・書評・どの媒体にも掲載されていない川本独自の取材によるゴア・ヴィダルに関する記事などをお届けします。

・ゴア・ヴィダルの略歴を知りたい方はこちらへ。

ゴア・ヴィダル - Wikipedia
(川本がほぼ全て執筆しています)

・ゴア・ヴィダルに関する包括的情報をWebで知りたい方はUniversity of Pittsburghでジャーナリズムに関する講義を行っており、ゴア・ヴィダルにインタビューした経験のあるジャーナリストHarry Kloman氏の運営するThe Gore Vidal Indexへ。

The Gore Vidal Index

・ゴア・ヴィダルの著書を日本語で読みたい方は、本の友社から出版されている初期の代表作で、同性愛を主題にして論争を巻き起こした小説『都市と柱』を。



・手っ取り早く日本語でゴア・ヴィダルに関する権威あるエッセイを読みたい方は川本三郎氏の『スタンド・アローン』を。



・更にゴア・ヴィダルに関する情報を得たい方はゴア・ヴィダル自身の三つの回想録PalimpsestPoint to Point Navigation, Gore Vidal: Snapshots in History's Glare.Fred KaplanによるGore Vidal:A Biographyをお読みになって下さい。なお、ゴア・ヴィダルの最新の伝記及び研究書はDennis AltmanによるGore Vidal's Americaです。




・「ゴア・ヴィダルの代表的著作をつまみ食いしたい!」という方にはThe Essential Gore Vidalをお勧めします。


それでは始まりです。